E山
飯山のエラーについて考えてみた。E山なんてタイトルしちゃいましたけど、僕は飯山ファンなんです。最近ファイターズファンにおける飯山の評価が芳しくないようなので、ちょっと考察してみます。
飯山低評価の原因がそのエラーであることに疑いの余地はないのですが、果たしてその評価は正しいのか。単に印象論によるところが大きいのではないか、ということで、具体的に守備成績を見てみました。
画像はその表です。守備率とは、補殺+刺殺を補殺+刺殺+失策で割ったもので、守備機会中、守備に成功した割合です。レンジファクター(RF)とは刺殺数+補殺数を守備イニングで割り、9を掛けたもので、1試合(9イニングス)あたりの守備機会、つまり守備範囲の広さを表します。表中のイニングはアウトの数で表示しているので、実際のイニング数はそれを3で割った数字になります。2006年は守備イニングのデータを得られなかったので、レンジファクターの算出はしておりません。(合計のレンジファクターは、2006年の補殺・刺殺を除いて計算しています。)なお、レンジファクターには幾つか種類があって、オリジナルのレンジファクター、それを改良したもの、簡易化したもの等がありますが、改良版は計算が面倒ですし、簡易版は守備イニングを試合数で代用するため、途中出場の多い飯山では適切な数値にならないことから、オリジナルのものを採用しました。
過去四年の規定到達者の守備率の平均が遊撃.978、三塁.964。最高は’08金子の.995(遊撃)と’09小谷野の.982(三塁)でした。
レンジファクターの平均ちょっとわかりませんが、参考までに、遊撃の場合、リーグトップクラスで5.00から5.20程度、小坂ゾーンで知られる小坂誠は1998年に5.55を記録しました。三塁の場合は、リーグトップで2.80程度。平均すると2.50から2.60くらいでしょうか。ロッテの今江はちょいちょい2.90くらいの数字を出しています。三塁は元々そんなに守備範囲の広い選手が守るポジションではないので、レンジファクターはさほど重要でないという考え方もできます。
注意点として、飯山は途中出場の多い選手なので、守備に絡む機会そのものは先発出場する選手に比べて格段に少なくなります。統計学的に考えると、あまり信憑性のあるデータとはいえないでしょう。そういう前提の上で、あえてそれを無視して考えるとします。
遊撃手飯山
データを見てみましょう。遊撃のレンジファクターで特に目を引くのが2009年の数字で、守備機会そのものが少ないので単純に比較はできませんが、小坂の最高値に迫る数字です。守備率も.980ですから、まずまずといったところ。
一年さかのぼって2008年。この年飯山は開幕前にレーシック手術を受けています。それが影響したのかどうかはわかりませんが、4月30日から5月24日の一ヶ月程度で、4つのエラーを記録しています。(内訳は、遊撃で3、三塁で1)このエラーが最後まで響き、守備率は.960とかなり落ち込んでしまいましたが、レンジファクターは5.20とやはり優秀です。
2007年はレンジファクターでみると酷い数字ですが、これは分母が少ないことによる偏差でしょう。これだけ差が出ると、守備範囲が狭いというよりも、打球が飛んでこなかったという考え方をするのが自然だと思います。
ちなみに、2006年は、遊撃で先発出場が14試合、途中出場が9試合ですから、単純に先発した試合はフル出場、途中出場では2イニングと考えて計算すると、守備イニング144回(アウト数では432)となり、RFは5.13で、2007-2009の平均5.14とほぼ一致します。実際には先発でのイニング数はもう少し少なくなるでしょうから、もっと良い数字がでるかもしれません。
飯山の遊撃守備は守備固めとしてかなり高い水準にあるといって良いでしょう。
三塁手飯山
2008年、2009年ともに三塁での出場はあまり多くなく、守備機会も少なくなっています。試合数、イニング数に比べて、三塁での守備機会(刺殺と補殺)は遊撃に比べて格段に少なくなります。この程度の数字じゃさすがにデータとして意味のあるものとは思えないので、この二年間のデータから得られるのは「2009年は20回に2回、2008年は3回に1回という高確率でエラーを記録し、ファンの印象を悪くした」という点だけにしておきましょう。
2007年は、守備率・RFともに優秀といって良い数字を残しています。2006年はやはりRFの数字を出せないのですが、途中出場56試合、先発6試合ということで、9*9+56*2、166イニング守ったということにして考えると、2.49になります。これは考えられる最悪の値に近いものだと思われるので、実際はもう少しマシでしょう。+0.05(守備イニングが3少なかった場合)と考えると、これも合計欄のRFと一致します。
ということで、飯山の三塁守備は、07までは平均くらい、08からは最低、という評価。
低評価の理由は三塁守備だ!
以上のことから、飯山の低評価の主たる要因が08年以降の三塁守備であることは明白です。また、08年のエラー多発期間の印象もまだ払拭されていないということもあるでしょう。(それと、2010年開幕三戦目にして早くも三塁でエラーを記録したというのも……。)
三塁守備の評価を下げる理由として、交代前まで守っていた選手との差も影響を及ぼしていると考えられます。というのも、ファイターズの正三塁手は小谷野ですが、その小谷野は昨年三塁手の守備率でトップになり、ゴールデングラブ賞を獲得した選手です。その選手と交代で三塁守備につくということは、少なくともそれと同等程度の守備力を期待されてしまいますが、実際の飯山はせいぜい平均レベルといったところ。それならば何故代えた、といわれてもしかたありません。
それでも飯山を使う理由
しかし、試合終盤に飯山が三塁守備につくのは、三塁の守備固めというより、一塁の守備固めという意味合いが強いことに注意しなくてはなりません。つまり、三塁を守っていた小谷野を一塁に回して、膝にケガを抱えた一塁高橋を引っ込めるため、ということです。
高橋を引っ込めるのが目的なら、最初から一塁に選手を送り出せばいいとも考えられますが、そこは一軍に登録できる人数が限られているので、ベンチに一塁の守備固め専門みたいな選手を置く余裕はありません。(去年までは代打要因も兼ねた選手がいたのですが……。)飯山は遊撃として優秀ですから、その控えとしてベンチに置いておきたい。でも遊撃の控えというのは毎試合必要なポジションではない、ということで、三塁も兼任させているというのが実情でしょう。
打撃力向上よりも三塁守備
飯山や紺田などのスーバーサブとして台頭してきた選手達は、毎年のように打撃力の向上が課題に挙げられます。しかし、今年からは状況が変わってきました。2009年に、正遊撃手の金子誠、正三塁手の小谷野の打撃が開花し、ちょっとやそっとでは追いつけないレベルの成績を残してしまいました。仮に飯山がシーズン通して.280くらいの打率を残すだけの力を身につけたとして、3割近い打率を残し、尚且つ守備力の高い選手が揃っている今、その使い道は限られてしまします。ですから、飯山の場合は、打撃力向上よりも、三塁守備を向上させることがチームにとってプラスになるのではないでしょうか。
もちろん、遊撃レギュラーの金子誠はもうベテランですから、いつ成績が大きく落ちるかわかりません。(去年がたまたま良すぎただけで、今年から急降下する可能性もある)飯山はそんな金子誠の後継候補という立ち位置でもあったのですが、もう30を超え、立派な中堅となってしまった今、守備要員としての役割を担い続けることこそが長く野球を続ける道だと、僕は思います。